皮膚扁平上皮がんの第一治療選択は外科的切除であるが、切除適応外症例に対しては抗がん剤投与などが行われるが、有効な外用剤の開発も求められている。

ヒトmicroRNA(miR)は約22塩基からなる機能性RNAであり、複数の標的遺伝子の転写産物に直接結合することで、遺伝子発現を負に制御する働きを有する。

そのため、近年、がん抑制的に機能するmiRをがん細胞へ導入する核酸補充療法は、がん治療における新たなモダリティとして注目されている。

そのなかで、miR-634のがん細胞への導入が、細胞内代謝や細胞生存に関連する複数の遺伝子を同時にかつ直接的に抑制することにより、効率的に細胞死を誘導することが明らかにされている。

しかし、micro RNAは直接生体内に投与すると破壊されてしまうため、粒子内に内包することにより保護する必要がある。

以前、合成2本鎖miR-634をLNP(lipid nanoparticle)に内包したmiR-634-LNP製剤を膵臓がん担がんマウスに全身投与することにより、腫瘍増殖が抑制されることをが報告されている。

今回、合成2本鎖miR-634を内包した“miR-634軟膏製剤”を開発し、皮膚扁平上皮がんに対する新たな外用剤としての有用性の検証結果が報告された。

皮膚扁平上皮がん担がんマウスモデルおよび皮膚化学発がんマウスモデルにおいて、miR-634軟膏製剤を経皮投与することにより、腫瘍細胞へのmiR-634の効率的な送達と標的遺伝子の発現抑制とともに、顕著な腫瘍増殖の抑制が確認された。

また、皮膚扁平上皮がんでは、Epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子が高発現しており、miR-634は、グルタミントランスポーターASCT2遺伝子を標的とすることにより、グルタミン代謝を抑制することがわかった。

これにより、皮膚扁平上皮がん細胞株A431担がんマウスモデルにおいて、miR-634軟膏製剤は、EGFR阻害剤の治療効果を増強することが明らかになった。

今回、細胞内代謝および細胞生存システムに関連する複数の遺伝子群を同時に標的とするmiR-634を創薬シーズとして用いた“miR-634軟膏製剤”が開発され、皮膚扁平上皮がんに対する新たな外用剤として、“miR-634軟膏製剤”の実用化が期待される。

本研究成果は、国際科学雑誌 Molecular Therapy – Oncolytics(モレキュラーセラピー オンコリティックス)にオンライン版で発表された。