現在、胃がんの発生原因であるピロリ菌の同定がなされ、除菌療法の確立により、発生数は減少傾向にある。

しかし、初診時に10%の確立で発見される肝臓転移症例は治療困難で予後が悪く、効果的な治療がないため、新たな治療法が待たれている。

量子科学技術研究開発機構(QST)では、放射線の照射距離が細胞数個分で、照射された細胞を殺傷する能力が高いα線を放出する核種アスタチン-211(211At)をトラスツズマブ抗体に付加した211At-トラスツズマブを開発し、転移性胃がんの一種である胃がん腹膜播種に対して治療効果があることを動物実験で実証している。

今回、211At-トラスツズマブが胃がん肝転移に対する治療効果評価が報告された。

胃がん肝転移のモデルマウスに211At-トラスツズマブを1回投与した結果、がん増殖抑制効果が示された。

一方で、副作用の指標となる体重減少や白血球数低下は一過性で軽微であり、肝機能や腎機能の低下は認められなかった。

これらより、211At-トラスツズマブによるα線標的アイソトープ治療は、胃がん肝転移に対して副作用の少ない効果的な治療法となることが期待される。

本研究成果は、「The Journal of Nuclear Medicine」オンライン版に掲載された。