免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞の活性を抑制するシステムに対して阻害し、ヒトの免疫系を活性化する事により、癌細胞を死滅される癌治療薬であり、抗 PD-1 阻害剤(日本名オプジーボ)、抗 CTLA-4 阻害剤(日本名ヤーボイ)がある。
ただ、非常に高価な治療法であり、重篤な副作用が患者の約25%から50%に発生するにも関わらず、効果が認められる症例は、最も効果がある悪性黒色腫でも20~30%にすぎないという課題が存在する。
今回、効果判定予測因子であるバイオマーカーの開発についての報告がなされた。
癌患者の多くが NLRC5 の機能や発現を失うことによって、癌抗原やウイルス抗原のように細胞の内部にある抗原を免疫細胞に表示する装置であるMHC クラス I の発現が低下し、癌に対する免疫応答が低下していることが発見された。
皮膚癌の患者におけるNLRC5 による治療効果を解析した。
治療開始時に NLRC5 の発現が高い皮膚癌の患者グループでは抗 CTLA-4 阻害剤に対する効果が高い頻度で見られたのに対し、NLRC5 の発現が低い患者グループでは治療効果が低くなることが明らかとなった。
さらに、NLRC5 の発現と他のバイオマーカーであるPD-L2の発現や癌抗原量などと組み合わせると、さらに治療効果がある患者群と効果がない患者群に分けることが可能となった。
NLRC5 の発現を他のバイオマーカーと組み合わせる手法は、治療効果予測に対してだけではなく、癌患者の予後=5 年生存率の予測にも効果的である事も明らかになった。
さらに、同様な手法を抗 PD1 阻害剤による治療を受けた患者群でも用いると、抗 CTLA-4 阻害剤による治療と同様、NLRC5の発現が治療予測及び予後の予測のためになるバイオマーカーとなる事が示唆された。
今後、治療開始時に、予測精度の高いバイオマーカーを測定して効果の可能性がある場合のみに免疫チェックポイント阻害剤治療を開始する選択肢が増加すると考えられる。
本研究成果は、Scientific Reportsにオンライン掲載された。