胆管癌に進行する前癌病変である胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)は、粘液の産生の有無にかかわらず乳頭上皮病変や拡張した嚢胞性病変を特徴とする特異な胆道腫瘍だが、今回、その病態や機序が明らかにされた。

FGF10-ERK シグナル経路の活性化は、肺や膵の腺管の伸長や分岐に関与している。ドキシサイクリン投与で分泌蛋白 FGF10 過剰発現を誘導可能な作成マウスでは、FGF10-ERK シグナル活性化でヒト IPN を模倣した乳頭状、嚢胞状に増殖する腫瘍性病変が発生した。

また、サイトケラチン 19(krt19)-iCreトランスジェニックマウス では、FGF10のパラクライン  及びオートクライン 作用により IPNB が発生し、胆道幹/前駆細胞を含む胆道上皮細胞や胆道周囲固有腺に由来することが示唆された。

KrasG12D、p53、p16 遺伝子の欠損や変異により、FGF10 誘導性 IPNB は多段階発癌を示した。

FGF10 誘導性 IPNB の発生・進展はFGF10-FGFR2-RAS-ERK シグナル伝達経路の阻害により抑制され、ヒトの IPNB 症例でも、FGF10、ERK の活性化がみられた。

これにより、このシグナルは、IPNB の治療標的であることが示唆された。

今後は、FGFR 阻害薬が胆管癌の治療薬として、臨床試験で高い奏功率を示し、胃癌への適応も検討され、この FGFFGFR 経路の抑制により他の癌腫の治療への応用が期待される。

本研究成果は、米国の科学誌「Cell Reports」(オンライン版)で発表された。