RAS遺伝子変異は代表的な発がん遺伝子であり、膵臓がん、大腸がん、皮膚がんや肺がんなどさまざまながんで発がんを促進するため、RAS遺伝子変異により生じる特定の異常タンパク質を標的とする分子標的治療薬が多数開発されているが、いまだ有効な治療薬の開発には至っていない。

今回、米国Dana-Farber Cancer Instituteと国立がん研究センター研究所分子病理分野を中心とした国際共同研究チームは、RAS(KRAS、NRAS、HRAS)遺伝子の変異について、発がんに関わる新たなメカニズムを解明することにより、核酸医薬を用いた新規治療への応用が期待されることを示した。

サイレント変異(タンパク質を構成するアミノ酸の変化を伴わない遺伝子変異)が、KRAS Q61K変異の発がんに必須であることを発見した。

これにより、KRAS、NRAS、HRASのコドンQ61周辺は、スプライシングに対して脆弱な領域であることが明らかになった。

今後、RAS Q61変異を有する肺がん、膵がん、皮膚がんなどに対する核酸医薬での新たな治療法の実用化と、スプライシングに対する脆弱性という生物学的に重要なRAS以外の遺伝子への応用も期待される。

本研究成果は、英国時間2022年3月2日付(日本時間3月3日)に国際学術誌「Nature」に掲載された。