大腸内視鏡検査時に発見される大腸癌の中でわずか0.6%と極めて稀な疾患として、神経内分泌細胞がん(NEC)が存在する。

この大腸のNECは低分化型で予後不良であることに加え、一般的な大腸がんと比較して、BRAF遺伝子変異を有している割合が高いことが知られている。

このBRAF遺伝子変異は、悪性黒色腫や肺がん、大腸がんなど、様々ながん種でドライバーがん遺伝子として見つかり、変異型BRAFを標的とした分子標的薬が複数開発されてきた。

しかし、悪性黒色腫や肺がんと異なり、BRAF遺伝子変異陽性大腸がんでは活性化BRAFに対する分子標的薬(BRAF阻害薬)のみでは十分な有効性が得られにくいことから複数の分子標的薬との併用療法が実臨床で使用されている。

一方で、BRAF変異を持つ大腸のNEC(CRC-NEC)ではBRAF阻害薬単独でも有効性が得られることが報告されている。

しかし、他の分子標的薬と同様にBRAF変異陽性CRC-NECにおいてもBRAF阻害薬に対する獲得耐性の出現が問題となってきている。

今回、BRAF変異陽性CRC-NECにおける薬剤耐性メカニズムが、がん研究会らの研究グループにより明らかにされた。

まず、BRAF変異陽性CRC-NEC患者の手術検体より樹立したがん細胞株を用いて、BRAF阻害薬耐性CRC-NEC細胞株を樹立し、その耐性機構を探索した。

詳細な解析によって耐性細胞ではBRAFスプライシングバリアントが発現し、そのバリアントがBRAF阻害薬に抵抗性を誘導することを発見した。

そしてBRAFスプライシングバリアントによる耐性は、BRAFからの増殖シグナル下流の因子であるMEKやERKに対する阻害薬が有効である可能性を実験的に明らかにした。

本研究から、BRAF変異CRC-NEC におけるBRAF阻害薬耐性機構の1つとしてBRAFスプライシングバリアントの発現を見出し、その耐性はMEK阻害薬やERK阻害薬により克服できる可能性を基礎研究レベルで明らかにした。