腫瘍形成やその悪性化を誘導する遺伝子変異(ドライバー変異)の蓄積によりがんが発生すると考えられている。
上皮細胞のドライバー変異は当該細胞の挙動を変化させるだけでなく、非腫瘍細胞(線維芽細胞、内皮細胞、血球系細胞など)にも影響を与えることで腫瘍形成や悪性化を促進する。
今回、東京大学医科学研究所腫瘍抑制分野の研究グループは、非腫瘍細胞に人為的な遺伝子変異を導入することで、良性腫瘍がその遺伝子変異の増幅や既知のドライバー変異の新たな蓄積を伴わずに浸潤能を獲得する、という全く新しい腫瘍悪性化機構を発見した。
さらに、この悪性化はCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞を必要とすることや、炎症性サイトカインの発現誘導等の炎症応答の亢進を伴わないことを見出した。
上記は、非腫瘍細胞の異常を起点とする、良性腫瘍の新たな悪性化機構の発見であり、当該分子機構の理解に基づく治療法開発への発展が期待される。
本研究成果は、「Cancer Research Communications」にオンライン掲載された。