がんは早期の段階で外科的や内視鏡切除を行えば完治が可能であるが、他臓器への遠隔転移を起こすと死亡率は格段にUPする。

遠隔転移経路は、いわゆる血行性転移を行う場合がほとんどである。

血液中を循環するがん細胞の多くは毛細血管から血管の外へと遊出することは知られていたが、毛細血管からの遊出が起こりやすい原因については不明である。

今回、九州大学大学院理学研究院、京都大学、東北大学、名古屋大学、東京農工大学、岡山理科大学、明海大学、同志社大学らの共同研究グループにより、血中を流れる細胞が血管の外への遊出を行うために、毛細血管のところで「ブレーキ」をかける新たな転移の仕組みが解明された。

転移する細胞モデルとしてニワトリ胚の生殖細胞を用いた解析を行い、転移細胞が血中で硬くなることで細い血管に挟まってしまうことを世界で初めて明らかにした。

すなわち、細胞が血管の外に遊出する場所を確保するために、細胞が自身の「硬さ」を「ブレーキ」として用いていることが示唆される。

これにより、細胞の硬さを操作対象とする、がん細胞転移の新たな抑止戦略につながることが期待される。

本研究成果は、米国雑誌「iScience」に掲載された。