本邦での大腸癌は最も罹患数の多い癌である。

盲腸~S 状結腸における結腸癌では、外科的切除は根治性だけでなく、術後に発生する様々な症状に影響を与える。

範囲手術でどの程度の長さの腸管を切除すべきかのエビデンスがなく、結腸癌手術において腸管を切り取る長さは国や地域により異なるのが実情である。

そのため、本邦の大腸癌研究会において、結腸癌手術で再発を防ぐために切除すべき腸管辺縁のリンパ節(腸管傍リンパ節)転移の範囲(つまり切除する腸管の長さ)を同定し、適切な腸管切除範囲を明確にすることを目的とした研究が行われた。

2013 年~2018 年に国内の 25 病院で手術された Stage I~III の結腸癌 2,996 症例を前向きに調査し、手術中に癌(原発巣)からの距離を測定して腸管にマークを付け、摘出した腸管の病理検査において体内での場所に対応したリンパ節と支配血管の「地図」を作成した。

この結果、約 35%の症例に腸管傍リンパ節の転移を認めた。その頻度は原発巣近傍で最も高く、原発巣から遠くなるにつれて低下した。原発巣から 5cm~10cmにある腸管傍リンパ節には約 2%の症例に転移を認め、原発巣から 10cm 以上離れた場所でのリンパ節転移はわずか 0.1%であった。転移リンパ節の位置は支配血管の分布とは関連を認めなかった。

これにより、切除すべき腸管傍リンパ節の観点から、結腸癌手術で切り取る腸管は原発巣から「10 ㎝」の部位が適切と結論した。

この結果は大腸癌取扱い規約の改訂の際の根拠となると共に、治療成績を向上させる結腸癌手術の重要なエビデンスになり、また、国際的な結腸癌手術の標準化に貢献することが期待される。

本研究成果は The Lancet Regional Health – Western Pacific (電子版)に掲載された。