腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍(骨芽細胞腫様リン酸塩尿性間葉系腫瘍、Phosphaturic mesenchymal tumor: 以下 PMT)は線維芽細胞増殖因子 23(FGF23)を産生し骨軟化症を引き起こす稀な腫瘍である。

融合遺伝子 FN1-FGFR1 と FN1-FGF1 が 病態と関連すると報告されているが、それらの融合遺伝子を持たない PMT の病態は明らかになっていない。

名古屋大学医学部附属病院希少がんセンター、リハビリテーション科、名古屋市立大学大学院医学研究科ウイルス学分野らの研究グループは、1 例の高 FGF23 血症を伴う腓骨発生の骨芽細胞様 PMT に対して次世代シーケンサー という精密な解析法を駆使して解析を行い、現在までに報告されていないNIPBL-BEND2 融合遺伝子を発見した。

この融合遺伝子をHEK293T 細胞株と MG63 細胞株に導入したところ、ともに有意な細胞の増殖を認めた。

融合遺伝子を導入した HEK293T 細胞株では、細胞増殖に関連する MYC シグナル伝達経路に関連する遺伝子の有意な発現上昇を認めた。

この結果から、新規融合遺伝子 NIPBL-BEND2 は MYCシグナル伝達経路を介して細胞の増殖に関与していることが示唆され、今までに報告されているFN1-FGFR1 または FN1-FGF1 融合遺伝子を認めないPMT の病因の一つである可能性がある。

本研究成果は、国際科学誌『Frontiers in oncology』に掲載された。