遠隔転移を伴う難治性がんに対しては、抗がん剤治療を行うことが多い。

しかしながら、効果については各々の薬剤により差があるため、治療前に、がんの遺伝子発現解析により、使用薬剤を決定する。

今回、がん研究会有明病院大腸外科、がん研究会がんプレシジョン医療研究センターらの研究グループは、進行直腸がん患者の、術前化学放射線療法を行う前の生検検体を用いて、次世代シーケンサーによる遺伝子発現解析(RNAシーケンス解析)を行い、化学放射線療法の治療効果を予測するような遺伝子発現パターンを発見した。

化学放射線治療前の検体の遺伝子発現解析を行い、がん細胞を殺す能力を有している、細胞障害性リンパ球の遺伝子発現スコア(細胞障害性リンパ球スコア)が、効果良好群(治療が効いて、がん細胞がほとんど残存しなかった群)で効果不良群(治療が効かずに、がん細胞が多く残存した群)に比べ有意に高いことを明らかにした。

この細胞障害性リンパ球スコアは、画像でのがんの広がりや切除後の顕微鏡でのがんの広がりなどの、他の臨床的、病理学的因子を含めて解析しても、それらとは無関係に、術前化学放射線治療の効果を予測できることが明らかとなった。

これにより、進行直腸がんに対する今後の個別化医療の発展に寄与するものと期待される。

本研究成果は、米国科学誌「JAMA Network Open」のオンライン版に掲載された。