前立腺癌は進行すると骨に転移しやすく、その多くが造骨性の骨転移像を示す。

しかし、近年、特に悪性度の高い進行した前立腺癌では溶骨性の骨転移像を呈することもあり、破骨細胞との関わりも注目されている。

また、エクソソームは、あらゆる細胞が分泌する 100nm 程の脂質二重膜で囲まれた小胞で、細胞間相互作用に重要な役割を担っており、特にがん細胞由来のエクソソームは、がん細胞の周辺の細胞を制御し、がんの進展に関わるが、前立腺癌細胞由来のエクソソームが、骨の腫瘍微小環境に与える影響に関してはあまり知られていなかった。

今回、東京医科大学医学総合研究所 分子細胞治療研究部門と東京慈恵会医科大学 泌尿器科学講座および国立がん研究センター研究所 病態情報学ユニットらの研究チームは、前立腺癌細胞から分泌されるエクソソームが骨の腫瘍微小環境に与える機能として、前立腺癌細胞由来のエクソソーム膜上に存在するCDCP1が破骨細胞の分化を誘導していることを明らかにした。

また、骨転移を有する前立腺癌患者では、血中エクソソームに含まれるCDCP1の発現が上昇しており、前立腺癌骨転移における新規病態解明および診断法の確立につながることが期待される。

本研究成果は、英国科学誌「Journal of Extracellular Vesicles」電子版に掲載された。