造血器悪性腫瘍である多発性骨髄腫において、IGH遺伝子と、がん遺伝子であるCCND1、FGFR3、MAF遺伝子との相互転座の診断は治療方針の決定、予後の推定に極めて重要である。しかし、従来、その診断は観察者が目視で数百の細胞を観察するFISH法を、個別の染色体異常について一つずつ行う必要があり、簡便性、迅速性に難があったほか、観察者の熟練を要するものである、

今回、京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学と東京医科歯科大学リサーチコアセンター、シスメックス株式会社、株式会社ビー・エム・エルの研究グループは、イメージングフローサイトメトリー法とマルチプレックスfluorescence in situ hybridization (FISH)法を応用し、多発性骨髄腫における複数の染色体転座を同時検出できる新規診断法を開発した。

イメージングフローサイトメトリー法と、複数の蛍光標識DNAプローブを用いて複数の染色体転座を同時に解析するマルチプレックスFISH法を組み合わせることで、多発性骨髄腫において診療に重要な3種の代表的な染色体転座を、大量の細胞において迅速かつ同時に解析可能な検査系を確立した。

これにより、多発性骨髄腫に対し、より適切な治療をより迅速に提供できるようになると考えられる。

また、染色体異常の特定が病型の診断や予後予測、治療方針の決定に重要となる他の腫疾患においても複数の染色体異常が検出できる本法の応用が期待できる。

本研究成果は、科学雑誌『Journal of Human Genetics』に掲載された。