肺がんはがん死因の一位であり、本邦では年間に約 7 万 6 千人、全世界では約 180 万人が死亡している。

肺がんの中でも最も発症頻度が高く、増加傾向にあるのが肺腺がんである。

肺腺がんは、肺がんの危険因子である喫煙との関連が比較的弱く(相対危険度は約 2 倍)、約半数は非喫煙者での発症である。

喫煙以外の危険因子が特定されていないことから、罹患危険群の把握や発症予防は容易ではなく、喫煙以外の危険因子の同定とそれに基づく罹患危険度の診断法が求められている。

また、肺腺がんの発症には、人種差があることも知られており、非喫煙者における発症頻が欧米人よりもアジア人で高いことが報告されている。

今回、国立研究開発法人国立がん研究センターと愛知県がんセンター共同研究チームは、米国国立がん研究所が主導する国際共同研究に参画し、日本人を含むアジア人の肺腺がん患者と肺がんに罹患していない人についてゲノムワイド関連解析を実施した。

その結果、日本人を含めたアジア人における肺腺がんリスクを決める 28 個(既知含め)の遺伝子の個人差(体質を決める遺伝子多型)を同定した。

遺伝子多型の個数の違いから、アジア人の肺腺がん発がんリスクは欧米人と異なることが明らかになった。

またアジア人肺腺がん患者の非喫煙者における肺腺がんリスクは、遺伝子の個人差による影響が大きいことも明らかになった。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。