肝細胞がんはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール多飲、メタボリックシンドロームなど様々な病因を背景とする複雑な疾患である。
B型肝炎ウイルスワクチンの普及とC型肝炎ウイルス治療薬の開発によりウイルス性肝細胞がんは減少してきているが、糖尿病や肥満などのメタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を原因とする非ウイルス性肝細胞がんはむしろ増加傾向となっている。
しかし、非ウイルス性肝細胞がんの予後予測因子は報告されておらず、発症メカニズムもその詳細は解明されていない。
今回、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 分子腫瘍医学分野と同肝胆膵外科学分野との共同研究グループは、非ウイルス性肝細胞がんの特異的予後予測因子としてミトコンドリア内膜トランスポーターSFXN1を同定し、SFXN1の不活性化が脂肪負荷時における脂肪の取り込み・活性酸素種(ROS)の産生を抑制して、脂肪毒性(lipotoxicity)を軽減し、生体内の脂肪負荷耐性に寄与することを明らかにした。
Cancer Genome Atlas Research Network(TCGA)から提供されている遺伝子発現公開データベースを用いて、非ウイルス性肝細胞がん患者の予後と相関し、腫瘍部分で発現低下している遺伝子を探索し、非ウイルス性肝細胞がん発症における役割を解析した。
本研究成果は、国際科学誌Scientific Reportsにオンライン版で発表された。