子宮頸がんは婦人科悪性腫瘍の1つであり、世界で30万人以上が死亡している。

ヒトパピローマウイルスワクチンの接種(一次予防)、子宮頸部細胞診による早期発見(二次予防)により、子宮頸がん死亡率の減少に大きく寄与し、早期発見や早期治療介入により子宮を温存する可能性も十分に期待できる。

しかしながら、本邦における子宮頸がん検診受診率やワクチン普及率はいまだ低く、一次・二次予防の拡充、適切な治療選択、新規治療開発を実現するために、診断や治療効果を予測するバイオマーカーは非常に重要な意義を有する。

体内に存在する代謝物の網羅的解析手法であるメタボローム解析は、個人ごとの表現型の違いを良く反映しているとされ、疾患のバイオマーカー探索や疾患特異的な代謝経路の同定に幅広く利用されている。

今回、ToMMoらの研究グループは、クリニカルバイオバンクに保存された子宮頸がん患者の血漿を用いた標的メタボローム解析を実施し、子宮頸がんに特有の代謝物プロファイルを明らかにした。

これまでにToMMoのコホート研究で導入している標的メタボローム解析キットを用いて、子宮頸がん患者45名の血漿中の628代謝物を定量分析し、その代謝物プロファイルの違いをToMMoのコホート参加者の血漿検体の分析結果と比較した。

その結果、子宮頸がん患者の血漿中において、アルギニンやセラミドなど47代謝物の有意な増加と、トリプトファン、オルニチン、グリコシルセラミド、リゾホスファチジルコリンおよびホスファチジルコリンなど75代謝物の有意な減少が認められた。

また、子宮頸がんの主な治療法である放射線療法の感受性群と非感受性群の代謝物プロファイルを比較したところ、非感受性群では多価不飽和脂肪酸、核酸およびアルギニン関連代謝に著しい変動が認められた。

これにより、子宮頸がんに特有の代謝物変化をとらえるだけでなく、放射線治療の感受性と関連する可能性のある代謝物プロファイルが同定され、血漿中の代謝物プロファイリング技術を子宮頸がんの診断や術後経過モニタリング、放射線治療感受性の予測に応用できる可能性があり、患者個々の病態に合わせた適切な個別化医療を提供する未来型医療への貢献が期待される。

本研究成果は、Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌の電子版に掲載された。