びまん性神経膠腫(グリオーマ)と原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)は特に発生頻度が高く、グリオーマの中で最も悪性度の高い膠芽腫(グリオブラストーマ)とPCNSLの予後は不良であり、診断の遅れが治療成績と関連していることが報告されている。

また、グリオーマでは神経学的機能を損なわない範囲での広範な腫瘍切除が推奨されるが、PCNSLでは診断化に必要な最小限の生検術が推奨される。

これは、術中レベルでの腫瘍の鑑別が、外科的戦略を含む迅速な治療方針の決定に重要であることを示す。

今回、横浜市立大学 大学院医学研究科 脳神経外科学教室と同大学生命医科学研究科 創薬再生科学研究室、同大学附属病院病理部を中心とした研究グループは、中枢神経系悪性腫瘍が疑われた腫瘍病変に対して手術中に病理診断と分子診断を行い、結果を迅速に統合化することで、検体採取からわずか90分で正確な診断が可能となるシステム“i-ID”(intraoperative-Integrated Diagnosis)を開発した。

本システムは、術中の手術法の選択のみならず、術後の化学療法、放射線治療の早期導入につながるとともに、次世代の個別化医療に向けた基盤的検査ツールとなることが期待される。

本研究成果は、米国癌学会学術誌「Clinical Cancer Research」に掲載された。