肺がんはがん死因の一位であり、本邦では年間に約7万6千人、全世界では約180万人の死亡数がある。

肺がんの中でも最も発症頻度が高く、増加傾向にある肺腺がんは、肺がんの危険因子である喫煙との関連が比較的弱く(相対危険度は約2倍)、約半数は非喫煙者での発症である。喫煙以外の危険因子が特定されていないことから、罹患危険群の把握や発症予防は容易でなく、特に、日本を含めたアジアの国では、EGFRという遺伝子の変異を原因として発生する肺腺がんが多いことが知られている。

今回、国立研究開発法人国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野と愛知県がんセンター及び全国19施設からなる共同研究グループは、日本人の肺腺がん症例約1万7千例と肺がんに罹患していない健常人約15万例の遺伝子の個人差を調べた。

その結果、日本人における肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差が19個同定され、その一部は、非喫煙者に多く発生するEGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんのかかりやすさと強く関わることが明らかになった。一部の遺伝子の個人差は、染色体DNAの末端に存在しゲノムの安定化に関わるテロメア配列を長くすることで、肺腺がんへのかかりやすさを高めることが示唆された。

これにより、非喫煙者の肺腺がんの予防、早期発見に役立つと期待される。

本研究成果は、国際学術誌「Cancer Communications」に掲載された。