従来の肝臓癌に対する治療法である外科手術、ラジオ波焼灼療法、TACEなどに加え全身化学療法として、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブなど、癌細胞が増殖するために必要な血流を遮断する血管新生阻害剤が使用されている。

一方、免疫の司令塔であるTリンパ球表面にPD-1またはCTLA-4という分子に対する抗体であるオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤は、血管新生阻害剤やTACEなど既存治療を併用することで相乗効果が得られている。

今回、血管新生阻害剤レンバチニブまたはTACEで治療を受けた肝癌患者の血液で、PD-1、CTLA-4をはじめ16種類の可溶性免疫チェックポイント分子の濃度を測定した結果、レンバチニブで治療を行った症例では、1週間後にsCD27が有意に低下し、sCD40、sTIM-3が有意に上昇していることが明らかにされた。

また、各免疫チェックポイント分子の変化に関する相関を解析すると、sCTLA-4とsCD86/sCD80、sPD-1とsPD-L1など、受容体とリガンドの関係にある分子同士で相関がみられた。

これらは、レンバチニブが癌微小環境の免疫状態に影響している可能性を示唆している。

また、TACE治療例でも、sCD27、sCD40、sTIM-3含む8種類の可溶性免疫チェックポイント分子の濃度が変化していることが明らかになり、TACEも癌微小環境の免疫状態に影響を与える可能性を示している。

今後、血管新生阻害剤やTACEと免疫チェックポイント阻害剤を併用した肝癌治療法の開発につながる可能性があると考えられる。

この研究成果は、国際学術誌「Cancers」に掲載された。