癌細胞は、PD-1 を代表とする免疫チェックポイントである一群のタンパク質が、免疫応答に重要な T 細胞の機能抑制に深く関与しており、癌細胞の腫瘍免疫からの逃避機構において重要な役割を果たしており、ニボルマブをはじめとする各種の PD-1 およびそのリガンドの PD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬が、多くの癌治療で効果をあげている。
免疫チェックポイント阻害薬の効果予測に、PD-L1 タンパク質発現の免疫組織染色法が使用されているが、限定的であり、新たなバイオマーカーが求められている。
今回、fluorescence in situ hybridization (FISH)法を用いた肺癌細胞におけるPD-L1 遺伝子コピー数異常が、ニボルマブの治療効果と関連する可能性についての報告があった。
PD-L1 遺伝子増幅はニボルマブの効果予測のための優れたバイオマーカーであり、ニボルマブを投与された 194例の進行非小細胞肺癌症例におけるニボルマブの奏効率は 、PD-L1 遺伝子増幅群で 80.0%であり、これはポリソミー(18.5%)や正常群(17.9%)と比較して高く、かつ遺伝子増幅群においては長期間に及ぶ奏効が観察された。
また、無増悪生存期間や全生存期間も統計学的に有意に延長しており、PD-L1遺伝子増幅がニボルマブの永続的な奏効と関連する指標であることが明らかになった。この関連は、現在利用されている PD-L1 タンパク質発現よりも強く、治療前に PD-L1 遺伝子増幅を評価することにより、ニボルマブの治療効果を予測する優れたバイオマーカーとなると考えられる。
今後は、個別化治療の推進のため、多くの症例における別の免疫チェックポイント阻害薬や他の癌種においても検討する必要があると思われる。
本研究結果は、米国医師会雑誌「The Journal of the American Medical Association」の姉妹紙である「JAMA Network Open」に公表された。