今回、遺伝性腫瘍症候群の責任遺伝子の遺伝的多様体についての報告がなされた。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群の責任遺伝子BRCA1及びBRCA2の遺伝的多様体のうち、日本人全ゲノムリファレンスパネル(3.5KJPNv2)に収載されている多様体について、がん発症リスク評価法の開発を行った。
BRCA1及びBRCA2遺伝子で検出されるリスクの不明な遺伝的多様体について、ToMMoのもつ調査票情報を活用することでがん発症のリスクの評価が可能であることが示された。
すでに3.5KJPNv2には、これら2遺伝子について既知の高リスク遺伝的多様体が収載されているが、3.5KJPNv2と米国ブロード研究所が提供する12万人以上の多民族集団の遺伝的多様体のデータと比較することにより、高リスクな遺伝的多様体が主に民族集団単位で分布することを明らかにした。
また、各種の遺伝的多様体の機能推定ソフトウエアを併用し、3.5KJPNv2から得られる正確な遺伝的多様体の頻度情報を組み合わせることにより、がん発症リスクのある遺伝的多様体を検索する技術を開発した。
それにより、リスク不明であった遺伝的多様体について、ToMMoのもつ調査票情報から発がんリスクが一般より高い可能性があることを明らかにした。
今後は、検診などのより、危険性の高い遺伝的多様体をより見分けることで個人個人にあった医療や健康管理をする個別化予防の実現につながることが期待できる。
本研究成果は、PLOS One誌(Public Library of Science社)に掲載された。