小児がんは稀な疾患でありがん全体の 1 パーセント未満に過ぎないが、小児の死亡原因第 2 位であるため早期診断を可能とする検査法の開発が待たれている。
血液検査や画像検査(CT/PET 等)は小児にとって侵襲的であるため、特にリキッドバイオプシーなどの低侵襲な検査法が望ましいと考えている。
今回、小児がんである神経芽腫の診断において、HVA/VMA 以外の尿中代謝物のバイオマーカーの報告がなされた。
神経芽腫患児(15 例)と対照群(39 例)の尿中代謝物を網羅解析し 998 種類の尿中代謝物を確認した。
これら代謝物のうち外因性物質を除去し、神経芽腫群で有意に増加した代謝物の代謝経路(チロシン代謝、メチオニン代謝、ステロイド代謝、ロイシン代謝)を特定した。
次に、OPLS-DAにより、神経芽腫群と対照群との判別を検討した結果、3-メトキシチラミン硫酸塩(3-MTS)、シスタチオニン(CTN)、コルチゾール(COR)を組み合わせたところ、適合度と予測性能が高いモデルが得られることが明らかになった。従来の腫瘍マーカーである HVA、VMA と、3 種類の新たな神経芽腫尿中バイオマーカー(3-MTS、CTN、および COR)において神経芽腫のリスクを比較検討したところ、従来の腫瘍マーカーである HVA、VMA の予測値は神経芽腫患児 15 例中 2 例で偽陰性を示したが、新たな神経芽腫尿中バイオマーカー(3-MTS、CTN、および COR)の予測値は神経芽腫患児(15 例)全例で陽性となった。
今後のさらなる研究展開により、有効なバイオマーカーが発見されていないがん種において、新たなバイオマーカーの特定に繋がる有力な手法となる可能性が考えられる。
本研究成果は、国際科学雑誌 Scientific Reports に掲載された。