90%以上の膵臓がんにおいては、KRAS というタンパク質の遺伝子に変異が生じることで、細胞増殖を促進するERKとAKTという2つの酵素の働きが異常に活発になり、がん細胞の増殖を抑制できなくなると考えられている。

現状の抗がん剤は、ERKが関与するシグナル伝達を阻害することでがん細胞の増殖を抑制するものが中心となっているが、膵臓がんに対する治療効果は十分でない。

今回、近畿大学薬学部分子医療・ゲノム創薬学研究室は、化合物ACAGT-007a(GT-7)が、特定の遺伝子変異のある膵臓がん細胞の増殖を強力に抑制し、細胞死(アポトーシス)を誘導することを発見した。

さらに、細胞増殖を促進する特定の酵素の異常活性化を阻害する薬剤との併用により、その効果が増強されることも明らかにした。

これにより、従来の抗がん剤とは異なる作用を原理とした、新たな治療法の確立が期待される。

本研究成果は、生命科学分野の国際的な学術雑誌”Cells”に掲載された。