5-FU系抗がん剤の解毒代謝酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)の遺伝子DPYDについて、重篤な副作用発現を予測する遺伝子多型マーカーは、欧米では4種類報告されているが、DPYD遺伝子多型には著しい民族集団差があり、本邦では、5-FU系抗がん剤の副作用発現を予測できる遺伝子多型マーカーはなかった。
東北大学未来型医療創成センター(INGEM)と東北大学大学院薬学研究科らの研究グループは、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)による大規模な一般住民集団の全ゲノム解析 である「日本人全ゲノムリファレンスパネル」を利用して、5-FU系抗がん剤の代謝酵素DPDの41種類の遺伝子多型バリアントタンパク質について、酵素機能に与える影響とそのメカニズムを解明した。
本研究では、日本人3,554人の全ゲノム解析で同定された41種類のDPYD遺伝子多型がDPD酵素の機能に与える影響を、遺伝子組換え酵素タンパク質を用いて網羅的に解析し、9種類の遺伝子多型で酵素機能が低下または消失することを明らかにした。
本研究の成果は、5-FU系抗がん剤で重篤な副作用が発現する可能性が高い患者を遺伝子多型診断で特定し、個々に最適な個別化がん化学療法を展開する上で、極めて重要な情報となることが期待できる。
本研究成果は、Frontiers in Pharmacologyで公開された。